「どうなんだよ?」
口ごもるあたしを急かす。
あたしの髪の先に指をくるくると巻きつけてもてあそぶから、トクトクと鼓動が動き始める。
今こんな風に触れないでほしい。
抱きしめられたわけでもキスをされたわけでもないのに、馬鹿正直なあたしの心臓は加速するから。
「……千秋は、羽鳥になにか言われたの?」
――ダンッ!
それは一瞬だった。
突然、千秋が真ん前に来たと思ったら、あたしの頭の横に両手をついて閉じこめる。
あたしが千秋の質問に答えないで話を逸らしたことに対しての怒りだとすぐにわかった。
「雅弥に、宣戦布告された」
「……」
「すげぇ真面目な顔して“シイは渡さねぇ”ってな?」
そう言った千秋の瞳の方が真剣味を含んでいた。
千秋は確かにあたしの目の前に居るというのに遠くに感じる……。


