千秋は目を細めて意地悪な表情を見せると、あたしを置いてきぼりにして足早に下駄箱へ向かった。 あたしも歩きだそうとした時。 「千秋…先輩……」 ん……? 今、声がしたような。 あたしはどこからか聞こえてきた柔らかい声に、辺りを見渡した。 すると、1メートルくらい先に、腰まで伸びたハチミツ色の髪の毛をした女の子が立っていた。 ふんわりと風になびく髪の毛。 後ろ姿だけなのに、それがすごく綺麗に見えた。 だけどあたしに背を向けていたから、その女の子の顔は見えなかったんだ。