「なにが氷のプリンスだ。笑わせんな。てめぇ、めちゃめちゃ焦ってんじゃねぇか?」

「焦ってるよ」


千秋は一歩、羽鳥の方へ踏み出すと端正な顔を寄せた。



「好きな女のことだからな?」


千秋は自信たっぷりで答えた。

千秋の言葉がじんわりとあたしの全身に染み渡る。

羽鳥はグッと拳を握りしめた。



「でもオレの理由は雅弥が本気だからとか、んなつまんねぇことじゃねぇよ?」


千秋の言ったことに羽鳥は眉根を寄せる。

秘密にすることを止めにしてバラそうかと言った理由はなに……?

あたしは疑問だらけだった。



「雅弥にはきっと、一生かかってもわかんねぇだろうな?」


見下すような表情を浮かべる。



「理由、言ってみろよ?」

「椎菜が好きでどうしようもねぇクセに、んなこともわかんねぇの?単細胞な雅弥に同情するぜ」


――ガンッ!

千秋のそばにある机を思い切り蹴り上げた。