だけど千秋はなんの躊躇いもなくあたしの元へ近づいてくる……。
涼しい瞳で、凛として。
決まったようにこっちに来るから鼓動はすごい速さで高鳴った。
ひゃああああああ、なんて叫ぶ余裕はない。
「椎菜」
――ドキンッ!
あたしのすぐそばで足を止めた。
ど、どうして?
秘密にしてるのに……。
こんな堂々と、しかも呼び捨てであたしを呼んで顔を向けてくる。
女の子達がざわざわとする。
あたしはずっと秘密にしていることが不満だった。
それは、こんな凡人と一緒に居るのを誰かに見られるのが恥ずかしいのかなとか。
あたしなんかが彼女だと知られたくないのかなとか、そう思っていたからだ。
だけど千秋は、
『お前と居るところ、誰にも邪魔されたくねぇから』
そう言ってくれたのに今は秘密がバレたら怖いと思っている……。


