「何が当然なんだ?」
そう言った黒澤拓海を小馬鹿にするように、クスッと声を漏らす。
「姫の唇を奪えんのは、王子だけの特権だって知ってたか?」
直後、千秋の長い指先があたしに伸びてきてクイッと顎を持ち上げられる。
すっかり冷えきった冷たい手とは反対に、あたしの熱は上がった。
ち……千秋……?
黒澤拓海を瞳に捉え千秋は言葉を放つ。
「お前は黙って、指をくわえて見てればいい」
艶のある声を響かせた。
千秋の長い前髪から滴り落ちる水滴が、あたしの瞼に降ってきたから反射的に目を閉じたのが合図。
冷たい唇があたしの唇を奪った。
柔らかいキス……かと思ったのも束の間で、千秋の手があたしの後頭部を抑え、勢いが増した。
「はぁ。ごちそーさん。じゃあなシイ」
黒澤拓海がそう言ったのが聞こえたけど目を開けることが出来ず、千秋のキスを受け入れていた。


