男の人の長い髪って鬱陶しく感じると思っていた。
「鬱陶しくなんかないんだ……。シズナが、長い方が好きって言ったからな」
なぜかとても愛おしそうに話す。
遠くにいる大切な女の子を思い描いているような。
それは黒澤拓海が初めて見せた優しい表情だった。
「それで、殴るのか?殴んねーのか?」
「な、殴らないけど。でも……」
黒澤拓海は制服のポケットから“Seven Stars”を取り出して口に加える。
あたしはそれを取り上げるとそばにあったゴミ箱の中に捨てた。
「殴らないけど、煙草はダメ!」
未成年のクセに!
それに今は制服着てるんだから!
「ぶはっ。お前さ、結構真面目なんだな?」
「誤魔化さないでよ!」
「わかったよ。殴られるよりマシだわ」
「だから殴らな……」
突然、黒澤拓海の手が伸びてきてあたしの耳に触れる。
ヒィッ!
な、なななな、なに!?


