「やっぱり好きなんだ。置き去りにしてきたクセに、今更なに言ってんだって話だよなぁ……」
あたしは黒澤拓海の切なさに満ちた横顔を見つめる。
さっきまで聞いていたMDの女の子の震える声が、頭の中でこだました。
置いてきぼりにしないでって、泣きそうな声で言っていた。
「きっと……きっと待ってると思うよ。その女の子、アナタのこと待ってるよ」
「なんでシイにそんなことが言えんだよ?」
なんでかなんて、あたしにもわからないよ……。
けれど、もしあたしがその女の子の立場だったら、きっとずっと好きで待ってると思う……。
「MD……途中まで聞いちゃって。あれ、アナタが居なくなる時に渡された物でしょ……?」
黒澤拓海は眉をしかめて目を伏せる。


