「初めてシイを見たのはオレがあのカフェの面接に行った帰りだった」
それはお姉ちゃんに紹介してもらって、少しの間あたしがバイトしていたカフェのことだろう。
「シイは店ん中で料理運んでて、オレが店の外からお前を見てたことにちっとも気づいてなかったみてーだけど、オレはずっと見てたよ。シイから目が離せなった」
う……嘘……。
あの時は千秋の誕生日になにかプレゼントしたくて、慣れない仕事をこなすのに必死で、窓の外なんて見てなかった……。
「シズナのことばっか考えてっから、オレ、ついに幻でも見てんじゃねーかって錯覚するくらい驚いた。でもシイと初めて会った時、シズナに似てんなって思った」
ドクッ……。
黒澤拓海とふいに目が合った。
それはあたしを“シズナ”と呼んだ日のように、あたしを見てるようで見ていない、そういう瞳だった。


