どうしてかな……。
あたしは今怒られてるのに、うんざりだとでも言いたそうな羽鳥の声を聞いて安心してる。
「ごめん……」
「別に。たまたま通っただけだから。んじゃオレ、行くわ……」
黒澤拓海の手を乱暴に振り払い、あたしに背を向けて歩き始める。
嬉しかったのと安心したので、 大きくて優しいその背中を今にも追いかけてしまいたい衝動に駆られる。
「あ、いたいた!んもーっ、勝手にはぐれないでよね!」
「羽鳥ったら、どこ行ってたの?探したんだからぁ」
「わりぃ」
たちまち女の子に囲まれる羽鳥。
今羽鳥の元へ駆け寄ったところであたしはきっと蚊帳の外。
だからその背中を追うことはしなかった。
それに、たまたま通っただけなんだよね、羽鳥……。
「シーイ。いつまで突っ立てんの?そんなに羽鳥が気になる?」
「別にそういう訳じゃ……」


