「羽鳥は一人で回るのー?」
「えー、じゃ、あたしと行こ?」
視界の端で羽鳥に声をかける女の子達が見えた。
羽鳥はあたしが思う以上にモテるから、そうやって他のクラスの女の子だって寄ってくるんだ。
「うっせぇな……」
「羽鳥ってば、らしくなぁい〜」
「放っとけ」
「落ちこんでる羽鳥って超ー可愛い〜」
聞きたくないと思ってしまう。
あたしが好きなのは……
「なにしてんだ?置いてくぞ?」
――千秋だけなのに。
差しのべられた手に自分の手を重ねようとした。
きっとこの手を握ればモヤモヤとした気持ちなんて消えてしまう。
「雅弥が気になるんだ?」
「違……」
「じゃ、なんで元気ねぇの?」
「それは……」
きっと千秋はあたしの胸の内を見透かしている。
こんな態度じゃバレバレだよ。


