黒澤拓海は何も言ってこないんだから、あたしから話かけることはないんだ。
あんなヤツとは関わりたくない。
考えているうちにあたしと羽鳥の順番が回ってきた。
「あたし!やっぱりやだ……!」
「は?今さらなに言ってんだよ」
だってだって……。
実際スタート地点に立つとめちゃめちゃ高いんだもん!
「こ、怖い!無理!滑れない!」
「んじゃ、オレに掴まれば?」
羽鳥はそう言って腰をおろすと、あたしの手を自分の腰に回した。
ドキッ……。
つられて羽鳥の後ろに座ったけど距離が近すぎて、恥ずかしいよ。
「……ちゃんと掴まれ。アホ」
「ん……」
羽鳥の背中も後ろ髪も濡れていて、水滴がポタポタと垂れてくる。
大きくて広い背中におでこをくっつけて、腕に力こめた。
「ぎゃぁあああああああああ!」
羽鳥が一気に滑るからあたしは死ぬかと思った。


