「ったくお前はしょうがねぇな」
千秋は呟くと「フッ」と笑みを漏らす。
あたしの顎に骨ばった指が伸びてきて、無理矢理クイッと向かせられる。
それだけでドキンッと大袈裟なくらい心臓が動く。
「ちょ……ちょっと」
押し倒された状況のまま、目線が絡み合う。
暗闇に目が慣れて、千秋の瞳がしっかりあたしを見つめていることがわかる。
だから身動き一つ出来ない。
「素直になれよ」
千秋は自分のネクタイに手をかけて緩める。
シュルっと布擦れの音を立てて外すと、ソレを軽く放り投げた。
流れるような仕草が綺麗で、ほんとにあたしと同い年なのかと思ってしまう。
鼻と鼻が微かに触れ合った直後。
「千秋……んっ……」
あたしの唇を塞いできた。


