羽鳥はぐんぐん千秋に近づいて、切れ長の目を細めてじっと睨んだあと挑戦的な言葉を口にした。
「今にてめぇを越えてやる」
「は?なんのこと?」
「シイのこと」
ドキッ……。
さっきまで笑っていた羽鳥が真剣味を帯びた瞳であたしに視線を送るから、思わず逸らしてしまう。
でもその瞳からは強い意思が感じられて、また揺さぶられる……。
「片想い?切ないな、お前」
「うっせぇ」
二人はそのまま言い合いながら下駄箱へ向かっていく。
あたしは動けないまましばらく、千秋と羽鳥の背中を見ていた。
――ギュッと胸が苦しくなる。
二人に抱く思いは全く違うものでそれが重なることは絶対にない。
あたしは下駄箱へ向かって一歩踏み出した。
その時、背後から気配を感じて、振り向こうとしたけれど……
「んんんーーー!」
後ろから伸びてきた手に口を塞がれた。


