「元気なかったからシイと何かあったのかって聞いたんだけど…」
あたしは相槌を打つ。
「シイのこと忘れたいから放っといてくれって……でも、雅弥は本気でシイが好きなんだ!1年の頃からずっと……」
ズキッ……。
激しい痛みが走った。
羽鳥には避けられたままだった。
冷めた口調であたしを見てくれることもなく、それが強い拒絶にも感じられて酷く悲しくて……。
「オレもつい色々言っちゃったんだけど、雅弥も複雑なんだと思う。でもこのまま旅行なんて嫌だ……」
忘れたいなんて言わないで……。
羽鳥の中からあたしを消さないでほしい。
勝手なことだとわかっていても、そう願わずにはいられなかった。
「仲直りしてね……?じゃあ」
コウちゃんが去ったその時、黒いバイクが正門に入ってきた。
ヘルメットをしてない羽鳥のウェーブの髪が揺れて、切れ長の瞳と一瞬目が合った。


