「アイツの目的が知りたかったんだよ。もうわかったからいいけどな」
息を吐くように千秋が笑った気がしたから、あたしは夕焼けを浴びるその顔を見上げた。
「なに、それ……?」
「アイツ、お前が好きなんだよ」
フェンスから肘をおろしてあたしの頬にそっと触れる千秋が、微かに眉を寄せたように見えた。
冷たい風が吹く中伝わる体温に動くことも出来なくて、オレンジ色を含む瞳に見惚れてしまう……。
「簡単に触られてんじゃねぇよ」
え……?
その瞬間、背中に腕が回りまた距離が縮まって、瞬きをした直後に柔らかい感触が押しつけられた。
千秋の手が背中からあたしの後頭部に移り、髪の毛に指を通す。
伝わるその熱を唇で受け止めて、千秋の香りに酔いしれてしまう。
「もっと警戒しろよ。バカ」
「なっ!」
熱が離れたとたんにそんなことを口にする。


