千秋と二人きりになったあたしは何から話していいのかわからずに、口をきつく結んで変にドキドキしている。
どうしよう……。
嫌な雰囲気になっちゃった。
「お前、学習能力なさすぎ」
「へ……!?」
千秋はフェンスに肩肘を乗せて、頬杖をついたままあたしを見る。
だけどそこに笑顔はなくて。
ちょっと不機嫌な千秋の顔を見ることが出来ないあたしは俯き加減で頷くのが精一杯だった……。
――パシッ
突然、右手首を掴まれた。
ギュッと力がこめられて、引き寄せられたあたしは身体ごと千秋の方に倒れてしまいそうになる。
か…顔が近いよ……。
流れこむ甘い香りにまたドキドキしてしまう。
「い、居たなら降りてくればよかったじゃない……」
耐えきれず口をついて出た言葉。
まともに顔を合わすのはあの夜以来で、胸の奥がくすぐったい。


