やっぱり……。

さっき背後からあたしのケータイを覗きこんでいたし、千秋からのメールを見られていたんだ。



「別に密会なんて……」


否定しても内心は焦っていた。

黒澤拓海が意味ありげな笑みを浮かべてあたしを見てくるからだ。



「おかしいなぁ。オレが聞いた女の情報によると、王子は誰の告白も受け入れない冷たい“氷のプリンス”のハズなんだけど?」


うぅ……。

いや全くその通りなんだけれど。



「シイと王子は秘密の関係なんだろー?」


あたしが千秋と付き合ってるってことは黒澤拓海にバレてるんだ。



「な、何が言いたいわけ?」

「別にオレは誰かに喋ろうとか思ってないよ?ただ……」


ただ……?

黒澤拓海はくわえていたタバコを指で弾いて飛ばすと、一瞬にしてあたしの身体を引き寄せた。



「王子なんかやめて、オレと付き合わない?」


目を細めて笑う。

その時、屋上の扉が開いた。