ケータイを強く握りしめたまま、ガバッと勢いよく後ろを向いた。
「な…なにするのよぉ!いきなり触ってくるとかやめてよね……」
ムゥッと唇を曲げて怒るあたしだけど、ほんとはただ心の準備がまだ出来ていないだけなのだ。
それなのに千秋ときたら……。
「好きな女に欲情してなにが悪いんだ?」
かぁああああああああ。
沸騰したみたいに湯気が出そう。
どうして千秋はそんな恥ずかしい台詞をさらりと言えるのよ……!
喜んでいいのかわかんないよ。
「お前を連れ出して正解だった。電話、店に居たヤツからだろ?」
「うん……超ーっ嫌な人なのっ!グズとかノロマとか言ってく…」
――ドサッ
視界が歪んで一瞬真っ暗になり、身体が揺れて目を開いた時には千秋があたしに覆い被さっていた。


