上手く言葉に出来ないけれど、お願いだから全部伝わってほしい。
こらえきれずに涙がこぼれた。
「椎菜」
ギュッと目を瞑っていたあたしを千秋はそっと抱きしめてくれた。
頭上で聞こえる千秋の声を、千秋の顔を瞳に映したくて顔をあげたけど涙で滲んでぼやけてしまう。
「んなこと、全部知ってんだよ」
千秋はバスローブの袖口であたしの涙を何度も拭ってくれた。
口角を吊り上げて余裕の笑みを浮かべる。
「お前はオレの女だろ?」
自信たっぷりの千秋にあたしは一生勝てなくてもいいって思った。
少しの不安を胸に口を開く。
「でもあたしなんかが彼女で……千秋は王子だから、千秋のこと好きな女の子たくさんいる……」
「オレはお前しか欲しくねぇよ」
オレンジのライトに照らされた千秋の顔を焼きつけてしまいたい。


