「なに、ソレ?」


千秋はあたしがトレイに乗せたケーキを見る。

なんだか急に恥ずかしくなって口を固く結んで、千秋を見れない。



「いつまでそこに立ってんの?」


部屋の入り口につっ立ったたまま動かないあたしを見てクスッて笑うから、もっと恥ずかしくなる。


学校に居る時とは違う。


あたししか知らない千秋が居る。

みんなが知らない王子様。



「こっちおいで?」

「ん……」


千秋に呼ばれて隣に座った。

肩がぶつかるくらい近くて心臓が暴れ出す。

テーブルにケーキと紅茶を置いて、あたしは目を泳がせてしまう。



「お前が作ったの?」


あたしはコクリと頷く。


ああ……。

もっと料理が出来たらよかった。

そしたらきっとお店に売ってるようなケーキを作って千秋を喜ばせてあげられたのかもしれない。