う、う、嘘ぉ――。
どうしよう。
千秋はあたしの胸元辺りに顔を寄せると、犬みたいに鼻を利かす。
微かに千秋の柔らかい髪の毛が肌にあたってくすぐったい。
ドキンッ!
涼くんの香水は刺激的な匂いだから、制服についちゃったのかも。
ヒヤヒヤして胸が激しく波打つ。
「オレを待たせて男と会うとは、いい度胸してんじゃねぇか」
ひぃいいいい。
暗がりの部屋のせいで千秋の表情はあまりわからないけれど、口調が微かに怒ってるよ……。
氷のプリンスと呼ばれていただけあってか、少し冷たい物言いだ。
「き……気のせいだよ!」
苦し紛れの言い訳をしながらズルズル後退りするあたしを見て、千秋は「フッ」と鼻で笑った。
そしてあたしとの距離をジリジリと詰める。