「いいのいいのー」
「放っておきましょうよ」
二人は止めるどころかその様子を楽しんで、クスクス笑っていた。
「でもちょっと可哀想ね。雅弥」
ユリさんはカップを戻して話を続けた。
「だって、好きな女の子が取られちゃったんだもの。それにその子には相手にしてもらえないから」
カップに口をつけてチラッとあたしに視線を送ったユリさん。
それって、それって……。
「わたし、ちょっと意地悪言っちゃたかな?ごめんなさいね」
いくら鈍いあたしだってわかる。
けれど羽鳥に“好き”だって言われたのは去年の話で、今でもそうなのかはわからない。
でも、あたしはそういうことにズルいんだ。
気づきたくなかっただけなのかもしれない。
「雅弥は、シイちゃんのことが好きなのよ。今も、ずっとね?」
その時チクリと胸が痛んだのは、どうして……?