「千秋っ……離して…痛い……」
お店を出ると陽は落ちていた。
何も言わずにあたしの手をひく千秋の後ろ姿が怒っているみたい。
だからあたしも口を結んだ。
沈黙、沈黙、ずっと沈黙。
苦しくなる……。
それでも声をかける勇気がないまま千秋の家にたどり着き、部屋へ通されベッドに座らせられた。
春希さんはまだ帰ってきてないみたい。
「あの……今日、誕生日なの?」
さっきお店で千秋は言ったけど、羽鳥は16日だって教えてくれたんだよ……?
15日なんて言わなかったもん。
沈黙に耐えきれず口を開いたあたしの視界に影が広がる。
千秋の香りにトクン……と胸が揺れた。
「結構、似合ってんじゃん」
「え……?」
「それ」
千秋はあたしが着ているお店の制服を指さした。
あ……。
そういえば、このまま出てきちゃったんだ。


