そして黒澤拓海は言った。
「つか、オレのこと覚えてる?」
「は……!?」
「オレと会ったことあんじゃん」
この男、きっと頭オカシイ。
今、初めて会ったのに普通そんなこと聞く?
「あなたなんて知りません!」
あたしは黒澤拓海から逃げるようにスタッフルームを飛び出して、ホールに立ち接客を始めた。
だけどあたしの頭の中は千秋の誕生日のことで埋めつくされてる。
今日は15日。
そして誕生日は明日の16日。
そのことばかり考えてる。
でも千秋は16日が誕生日だなんて言わなかったし、ユリさん達はこの前、突然帰っちゃったし。
「つっ立てんなよ。仕事しろ」
「……」
「シイ、聞いてる?」
「ちょっといきなり……」
今日ってゆーかさっき初めて会ったばかりなのに、はーちゃん達みたいにシイって呼ばないでよ。
「怒んなよ。仲良くしようぜ?」


