「…はと……り?」
羽鳥は眉を寄せて見つめてくると、あたしの前髪をくしゃりと掴んで、あたしの顔を持ち上げた。
切れ長の瞳に驚く自分の顔が映りこんだ。
「どうせアイツに抱かれちまうんだよなぁ」
まるで独り言みたいに呟く。
切なげな表情から目が離せない。
そんな言葉を言った羽鳥はいつもの羽鳥じゃないみたいだった。
「ほんと、タイミングいいヤツ」
「え?」
あたしの前髪から手を離した。
羽鳥の目線を辿ると廊下からこっちを見ている千秋が居た。
わわわっ……。
あたしが動揺している間にも、千秋はA組に入ってきた。
「きゃぁああああああああ!」
「いやーん!王子よぉ〜」
「その冷たい瞳で私を縛ってぇ」
女の子達の声援を浴びながら、千秋はあたしと羽鳥の真ん前まで来て「フッ」と鼻で笑った。
「早速、浮気かよ?」


