羽鳥が窓に背をついてコーラのプルタブを空ける姿を、あたしはただ見つめているだけだった。
そしてあの日のことを思い出す。
『オレと浮気しちゃおっか?』
そんなこと言われたからかあたしは、羽鳥の顔をまともに見ることが出来ないんだよぉ……。
「オレが教えてやろうか?」
ふいに羽鳥があたしを見た。
「男の気持ちってやつを」
羽鳥はウェーブの髪を指先でいじりながら「フフン」と笑った。
うーん……。
思いきって聞いちゃおうかな。
気まずいけど一人で考えてもわかんないし。
「お…教えて?」
すると羽鳥はコーラに口つけたあと、切れ長の瞳をさらに細めた。
そしてあたしに手招きする。
なんか怪しい笑顔だと思いつつ、あたしは羽鳥の隣へ行くと、思いきり引き寄せられてしまった。
悲鳴をあげる暇もなく羽鳥はあたしの耳元でひっそり話してくる。


