女にはわからない男の気持ちだって、前にお姉ちゃんに言われた。
……そんなのわからないよ。
「うわ、赤い点々が3つもある」
「キスマークってやつか?」
教室へ入ってくるなりコウちゃんと羽鳥がからかうように笑った。
は、恥ずかしいよぉ。
あたしは襟元を寄せて隠した。
3つの赤い刻印が焼けつくように熱い。
「シイ元気ないよー」
そう言いながらコウちゃんはボーっとするあたしの髪の毛で遊ぶ。
ちょまんげにしたり変てこりんなみつ編みにしたり。
「シイは王子の彼女になってめでたいってのに、男の気持ちってやつがわかんないですって」
――バンッ!
はーちゃんがそう言った直後、羽鳥が鞄を机にぶん投げた……。
「あちゃぁ。雅弥、怒ってるよ」
「こうなると思ったわ。シイが王子の彼女になったから妬いてんのよ」
二人の声にあたしは口ごもる。


