ひぃいいいい……。
ユリさんってばそんなストレートに。
あたしはその場で身体に力が入ってしまい、心臓はさらに速まる。
鞄とローファーを落とさないように、両腕でギュッと抱きしめた。
「どうなのよ、千秋?」
なんて答えるんだろう……。
あたしはゴクリと生唾を飲みこみ、これ以上、二人を見るのをやめて音をたてずに背をむけた。
沈黙が背中にのしかかるようで。
力いっぱい手を握りこんだ。
「ああ。そうだよ」
えっ………?
急に聞こえてきた千秋の声が、何かの聞き間違えかと思ったあたしは、耳を澄ませる。
「わたしね、千秋とシイちゃんは付き合ってないって思ってたんだけど、いつの間に……」
「オレは、とっくにそのつもりだけど?」
あたしの耳は何でも自分の都合のいいように聞こえるらしい……。
――舞い上がちゃうよ。


