「そういうことは自分の男にしてもらえよ」
淡々とした口調で答える千秋の低いトーンが、静かな部屋で響く。
「……彼氏なんていないもの」
「だからってオレに言われても」
「千秋しか頼れないのっ!」
悲鳴に近い声だった。
もう、迫真の演技だ。
唖然としながらもあたしは目を離せない。
「ねぇ、お願い……千秋だって男の子なんだから、そういうことしたくなる時ってあるでしょう?」
エロチックに響く声。
そういうことって……。
ま、ま、まさかね。
ユリさんはそれで止まることもなく、甘えるように寄り添って千秋の肩に頭をもたれた。
千秋の茶色い髪の毛が揺れる。
ズキン……。
思わずその光景から目を伏せてしまった。
嫌だよ……。
正直な気持ちが胸を突いた。


