「ねぇ〜、千秋ぃ」
え……?
なに、コノ甘えた声は。
あたしはまだ完全に閉まっていないリビングのドアの隙間から、二人の姿をそっと覗いた。
でもあたしから見えるのは後ろ向きになったソファーに座る二人の頭だけだ。
正面を向いていないから二人の表情はわからない。
って言っても、ソファーがこっち向きになっていたらココから覗いているのがバレちゃうかも……。
「なんだよ?」
「わたしね、最近…誰かに抱きしめてほしくてたまらないの……」
聞こえてきたのはユリさんの声とは思えないような、艶のある声。
ドキンドキン……。
悪いことをしているような気分と、少しの不安で胸がざわついた。
ユリさんは本音を聞き出すって言ったけれどいったいどうやって?
いくら考えたってわからない。
ユリさんにまかせよう。


