トイレへ隠れる前にユリさんはあたしに、“絶対見つからないようにね”って言ったんだけど……。
じ、自信ないよぉ。
まるで大舞台に立たされたみたいな緊張感が走った。
もうすっかり忘れ去られているであろう、南センパイの時だってあっさり見つかったんだもん。
思い返せばあれが千秋との始まりだったんだよね……。
春希さんはユリさんが呼ぶまで二階の部屋に居る。
きっともうすぐ千秋が帰ってくるだろう。
ユリさんは千秋に何を聞くんだろう?
あたしがユリさんに話したのは、いつまでも秘密にしてるのはなんでか。
それは凡人であるあたしと一緒に居るところを誰かに見られるのが、千秋は嫌なんじゃないかって思って不安だということ。
……千秋はなんて答えるの?
――ガチャッ
ぎゃあああああ!
今、玄関の方から音が。
ち、ちちち千秋だ……。


