「あ、もしもし千秋?今どこ?」
春希さんは早速、ユリさんの指示通り千秋に電話をかけ始めた。
「えっ!?花森ビルの前?あ……いや、ちょっとコンビニ寄って来い!クロースの発売日なんだ!続きが読みたくてさ……」
クロース?
弱気な声を出す春希さんを見て、ユリさんは笑いをこらえている。
「嘘が下手ねぇ」
と、ユリさんはリビングの隅にある棚へ目をやる。
そこには“クロース”“待望の第27巻”と書かれた帯がついた漫画が置かれていた……。
「わたしに全部まかせてね。あ、でもこれからやることは全部嘘だから、ヤキモチやかないでね?」
クスリとイタズラに笑った。
ヤキモチって……。
「よし。千秋は今からコンビニ行くから少しは時間稼げると思う」
「ありがと春くん。じゃ、シイちゃん!まず自分の靴を持ってきて、トイレに隠れてくれる?」
へ……?


