「アイツのことで、んな顔してるお前なんか見たくねぇんだよ」
眉を寄せて強い眼差しを向ける。
羽鳥があまりにも真剣な瞳をして言うから、あたしはその瞳から目を逸らすことが出来なかった。
「頼むから、そんな顔すんな」
まるで痛みをこらえるような、絞り出すような声に胸がキュッとした。
羽鳥は優しい。
1年の頃から、ずっと……。
あたしは頷くことも出来なくて、上手に振る舞うことも出来ないまま俯いてしまう。
次の瞬間、視界が揺れた。
羽鳥の腕があたしの腰へ伸びて、グッと思い切り引き寄せられた。
一気に縮まる距離に驚く暇もなく、羽鳥はあたしの顔に自分の顔をそっと近づけてくる。
もう片方の手であたしの髪に触れた。
切れ長の瞳にあたしが映って、シトラスの香りに包まれた直後。
「オレと浮気しちゃおっか?」
口づけをするように囁いた……。


