それから待ち合わせをして会うことが多くなって、和志さんは美結に色んなことを教えてくれたの。
例えば、海水中に含まれているウランは地中のおよそ千倍とか。
雨粒の時速は100キロから200キロとか。
イチジクの花は実の中に咲いて、外からは見えないから、漢字で“無花果”って書くんだよとか。
フランスでは、白いアスパラガスを“マドモアゼルの指”っていうんだよとか。
美結はそんな和志さんに惹かれていったの。
少しずつ近づいていった……。
しばらくして、付き合い始めた。
『僕と付き合ってほしいんだ』
和志さんの真剣な表情に、胸がキュンッてしたの。
付き合うことになっても特別なことはなくて、和志さんと美結は帰り道を手を繋いで歩いた。
夕焼けを背に、初めてのキスをしたの……。
和志さんとの帰り道はひたすら幸せだった。
今思えば、美結は浅はかだった。


