雨に消えていく背中を見つめながら鼓動が波打つのを感じて、さっきのことを思い浮かべる。
時折、触れる肩に戸惑いを覚えながら美結はドキドキしていたの。
だって、男の人とこんなに接近したことは初めてだったんだから。
――次の日。
『傘、ありがとうございました』
『ちゃんと帰れた?』
『はい?一人で帰れますよ』
『ははっ。ごめん。キミ、中学生だから大丈夫かなぁってね』
妙に子供扱いされて腹がたった美結は、彼を無視して歩き始めた。
でも彼はついてきて、ごめんと、また謝ってくる。
有名進学校の彼が中学生の美結に頭を下げてるのがオカシクて、つい笑っちゃったの。
そして彼のことを少し知った。
彼の名前は和志(カズシ)。
学校ではあまり目立たないタイプらしい。
でも柔らかい口調に理知的な瞳、笑うと見える八重歯が印象的だったの。


