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いつか恋をしたいって思ってた。
あれは中学1年の頃。
梅雨に入って肌寒い6月だった。
その日、学校からの帰り道。
突然の雨のせいで傘を持っていなかった美結は、近くの本屋の屋根下まで走って、雨宿りしていた。
『傘ないの?』
本屋から出てきた制服姿の男の人が声をかけてきた。
美結より年上だと思った。
それは、彼が進学校で有名な私立高校の制服を着ていたからだ。
『僕が入れてあげよっか?』
『でも……』
『ほら、遠慮しないで』
『あの、えと……はい』
彼の夕焼けのように優しい笑顔に負けてしまって、美結は彼の傘に入れてもらったの。
途中、帰り道が別れることになって彼が美結に傘を貸してくれた。
彼は雨の中を走り出す。
『ちょっと!傘……!』
『貸してやるって。明日、さっきの本屋で待ってる』


