重い空気が漂う中あたしは硬直していた。
「椎菜のことになると、すぐ熱くなるんだな?彼氏でもねぇのに」
目を細めて千秋は鼻で笑った。
「てめぇにも言えることだ」
挑戦的ともとれる千秋のその言葉に反論する羽鳥の顔は険しくなっていく。
そして続けた。
「じゃあなんで、てめぇはそんなに冷てぇんだ?お前がちゃんとシイのこと捕まえてねぇから……」
「お前に言われなくてもわかってんだよ。いちいち喚くな負け犬」
羽鳥の言葉を遮った。
千秋は涼しげな表情を浮かべて笑みをこぼすと、C組の教室へ入っていった。
「なにもわかってねぇよ……」
呟いた羽鳥の声は少し掠れてて、背中が怒っているように見える。
あの日、羽鳥が来てくれたことを思い出すと胸の奥がくすぶられるようで、切ない気持ちになった。
「せんぱーい」
背後から声が聞こえた。


