「お前、マジでわかんねぇの?」
すぐ側で羽鳥の声がした。
顔を上げるとしかめっ面を浮かべる羽鳥と、ポケットに手を突っこみけだるそうな顔をした千秋。
一瞬、千秋と視線がぶつかった。
ドキリ……としてすぐに逸らそうとしたら、千秋が口元で笑った。
そして再び羽鳥に目をやる。
「知らねぇな。あんな女のことなんて」
美結ちゃんの話だろうか。
淡々とした口振りで言った。
「思い出せよバカ!てめぇがまだ“人のモノ”じゃねぇかって、聞いてきたぞ?」
羽鳥の口調が荒々しくなる。
その言葉に、千秋の眉がピクリと動いた。
「あの女がシイに何したかわかってんのか?」
ウェーブの髪の毛をかきあげる羽鳥は、うんざりだとばかりにため息をついた。


