「首に手回せよ」
「……え?」
息を整えるのがやっとだというのに、千秋は悩ましげな表情であたしを見下ろして言った。
熱い吐息に前髪が揺れる。
気持ちが高ぶっていく。
千秋の長くて柔らかい髪の毛が、あたしの頬をふわりと撫でるからくすぐったくてたまらない。
「なに照れてんの?」
「だ、だって……」
恥ずかしいんだよぉ。
あたしの顔を見て、もう気づいてほしい。
ほんとは、わかっているクセに。
意地悪でズルいなって思う。
「前ココに来た時は、あんなに激しかったのに?」
「な……なによぉ」
その話題は湯気が出そうになるくらい恥ずかしいよ。
初めて千秋の家に来た時は千秋が間違えてお酒なんか飲んじゃって、それで……。
ダメ……。
思い出すとあたしはきっと逃げ出したくなるくらいに顔が赤くなっちゃうから、今は考えない……。


