春希さん曰く千秋は美結ちゃんのことを追い返したけれど、あたしはほんとは怖かったんだと思う。
“同情”だと言われたことになんの反論も出来なくて、もしもソレがほんとだったらと思うと……。
怖くて、たまらなかった。
否定出来る自信もなかった。
「じゃあ、この傷はなんだ?」
あたしの髪の毛を払いのけて千秋は頬に触れた。
ピクリと身体が動く。
「……転んだんだもん」
精一杯の言い訳。
強がることしか出来ない。
「転んだだけで、こんな赤くなんのか?もっとましな嘘つけよ」
「……」
今ここで何か口にしたら絶対に涙が溢れてしまうから、あたしは唇を噛んで沈黙した。
千秋の前では、泣きたくない。
だからあたしは動揺を隠すように言った。


