桜の花びらのようにあたしもぐちゃぐちゃにされるんだろうか。
美結ちゃんに惑わされてゆく。
茜色の空が辺りを包んで、美結ちゃんの伸びた影があたしを隠すように、より大きく映しだされる。
「ベラドンナって知ってるぅ?」
突然の問いかけにあたしはフルフルと頭を振った。
声が上手く出せなかったんだ。
美結ちゃんは手を前に出して爪を見せる。
鋭く尖った爪にはくすんだ紫色のネイルが施されていて、小さな黒色の丸が描かれていた。
「アンタは知らなくて当然だよねぇ?コレは、ベラドンナっていう花の実だよ?」
……ベラドンナの実?
黒色の丸に視線を落とす美結ちゃん。
「ベラドンナはくすんだ紫色の花を咲かせたあと、実をつけて、だんだんと黒色に熟していくの」
唇に爪を添えて、舌先で舐めた。
ゾクリと、冷たさが背筋を伝う。


