うっとりとした表情を見せる。
艶っぽい声で呟く美結ちゃんの頬は、夕陽を浴びているせいかほんのりと赤く染まって見えた。
「どうしてわからないのぉ?千秋先輩もアンタが鬱陶しいのよ!」
喉の奥が焼けそうになる。
沈黙し続けるだけだった。
美結ちゃんはあたしから二、三歩離れ、歩道のわきに咲いている桜の木に近寄ると、枝をもぎ取る。
バサッと揺れる桜。
再び近づく距離がただ怖かった。
「アンタも、粉々に散ればいいのよ」
震えが止まらないあたしの前で、バキッ……とソレを握り潰した。
美結ちゃんの手の内から花びらがこぼれ落ちる。
夕陽を浴びる花びらは優しく淡いピンク色から、紅の色に染まる。
ハラリ、ハラリと散りゆく花びらをあたしはただ目を見開いて見つめることしか出来ずにいた……。
『握り潰す』
涼くんの言葉が脳内で木霊する。


