「ほんと……?」
「ああ。つぅか、さっき言おうとしたらシイが教室飛び出してったんだよ」
あっ……。
そういえば羽鳥が何か言いかけてたっけ。
「あの時はつい、涼くんなら何か知ってるかなぁって思って……」
あたしはベーカーを空焼きしてバターを垂らし温度の確認をする。
「それで羽鳥はどこで見たの?」
はーちゃんの問いかけに羽鳥はウェーブの髪をいじって曖昧な表情を浮かべた。
「こないだも考えてたんだけど、なかなか思い出せねぇんだよ」
コウちゃんが美結ちゃんの記事を見せてきた時も、渡り廊下で羽鳥は何かを考えこんでいた。
「思い出してよ、羽鳥……」
難しい顔をして考えこむ羽鳥。
「見たことあんだけどさ、顔と名前が一致しないっつぅか……」


