「だから?」
あたしから身体を離すと、千秋はめんどくさそうな顔つきで美結ちゃんに目線をやる。
いつもより低いトーンが響く。
「えっ?だから、こんな凡人相手にしちゃ……」
と、言いかけながら美結ちゃんは目を丸くした。
「どうでもいいけど、邪魔しないでくんねぇ?」
口元を吊り上げる千秋。
その冷酷な笑みは怖いくらいで、口を結んでしまったあたしまで身体の奥がゾクリと震えた。
「こっちは限界なんだよ」
「ひゃ……」
千秋は座ったままの格好であたしの髪の毛に指先で触れてくる。
ブラウンの瞳があたしを覗きこむから、変にドキドキしちゃう。
美結ちゃんの痛い視線を感じながら、重苦しい雰囲気が漂う中あたしは沈黙するしかなかった。
視界の隅で美結ちゃんが動くのがわかって、恐る恐る顔を向ける。


