「それよりもさ、俺今年デビュー!」

「・・・何が?」

いきなりデビューと言われても何のこったと頭を捻れば

「これだよこれ。ついに親父が連れてってくれるって言ったんだ」

言って銃を構えるポーズをとった。

「猟に行くの?」

「ああ、小さい頃からのあこがれだったし、なんせ、自分で獲ったものを自分で調理できると思うとさ、なんかワクワクしねえ?」

「調理師免許取れたんだ?」

「取れたった・・・いつの話するのかな・・・」

この春までは京都のフレンチレストランで働いていたのに突然戻って来て山小屋風の猟師料理を食べる事が出来る自分の家へと戻ってきたのだ。
どうも京都のレストランで猟で捕まえた獲物を捌いて料理するメニューをやっていたそうだが、元々こんな環境で育った啓太の目にはその鮮度の悪さが気になったらしい。しかも上等の物ではなく天然物と名を売っただけの粗悪品を提供してたと言うのだ。
何年かは我慢したが詐欺の片棒はかつげないとやめてしまったのだという。

「お前が戻ってこなかったら俺山に入れなかったところだったよ」

「山菜でもとってる方が啓太さんには丁度いいかも」

「この口が言うか?!」

言って頭をグリグリとなでつけられてしまった。