緑の魔法使い

まだ朝と言うのに締め切った部屋は灯りをつけてもまだ薄暗かった。
意図的に灯りを弱くしてあるのも一因だが、それでも服を脱げば肌を診るには問題はなかった。
まずは、むき出しの顔にあの臭い液体を吹きかけられる。それを化粧の要領で両手で優しく馴染ませるように肌へとしみこませる。
次は頭だった。
ここに来て以来シャンプーもトリートメントはもちろん、ぼろぼろの肌同様手入れで誤魔化さなければならないほどキューティクルの毛羽立った髪はあっという間に露になった。
指で梳けばぎすぎすと音がしそうな髪にその液体を吹きつけ、揉みこむように頭皮にも馴染ませた。
背中にかかる髪に時間をかけて馴染ませれば、次はクビへと取り掛かった。
出来る限り襟のある服や、首のある服で隠していた部分だが、元々肌の弱い部位でもある。
赤みの引かない肌に目を反らしたくもなるが、橘さんは容赦なくそこにも同じ液体を吹きつけた。
「服、脱いでもらえるかな?」
ついにこの時が来た。
隣室で羽鳥と綾瀬川が待機しているとはいえ肌を人目に晒すのは勇気がいた。
思わず二の足を踏んでしまえば一枚のタオルを渡してくれた。
「とりあえずは背中からやろう。恥かしいなら前は隠して後ろを向いて」
いつも家で使うふんわりとしたタオルではなく、太陽の臭いがする何処かゴワゴワするタオルには石鹸の香りもない。
だけど、この臭いが服に染み付くのは嫌だから、背中を向けたまま、ショーツ一枚の姿になる。