緑の魔法使い

それからが大変だった。
運転手を残し、執事の羽鳥さんを東京へと戻し、当面の荷物と身の回りの物を持ってくるという。そして内密にご両親へとこの事を報告し調査する事となった。

服が乾く合間、裸にしておく事もできず、俺のシャツとズボンを履いてもらう事になったが、むき出しの両手、両足は風が当たるのも痛いのか部屋の中でじっとしていた。

「とりあえず毒の中和と皮膚を何とかしよう」

言いながらさっきからずっとすり鉢で練っていた十数種類の薬草の味見をする。
青臭く、苦く効能だけを重視した薬は水瓶に頭を突っ込んで水を飲みたくなるほどのえぐさだ。嫌な汗が浮かび上がるが、人目もあるのでコップの水だけで口の中を濯ぐ。
木の板に小さな穴に薬を詰めて分量を量る。
本当なら丸めながら乾燥させて丸薬を作るのだが、効能は一緒なので柔らかいまま水と一緒に差し出す。

「体重は40キロ台かな?」
「女性に体重を聞くのは失礼では?」
「薬は毒にもなる。正確でなくてもいいから大体の体重を知ることは不可欠だ」
「・・・41キロです」
痩せていると言っても良い病的な体格はやはり体調が原因なのも理由もあるのだろう。
「なら、これから朝昼晩の毎食後4粒。多くても少なくても効果は無いから数は決して間違えないように」
と、今飲めと勧めれば俺と同じように一気の顔を青ざめながら一気に飲み干す。
そして水が足りないと言うようにコップを差し出すから、手を引いて水瓶まで案内すれば、コップに何杯も水を汲んで飲み干した。
「な、何ですのこの薬は・・・」
何処か涙目で、綾瀬川さんもオロオロと鼓都さんを心配するが
「あんたが所望した薬だよ。皮膚の薬はこの薬を作り終わってからになるからもうちょっと待ってて」
両手でコップを握りしめるも
「毎食後あの薬を・・・」
「飲みにくかったらオブラートでも買ってくるといいよ」
「・・・羽鳥に買いに行かせます」
車もなく、薬局もないこの村での判断は紛れもない正しい判断だろう。