長い廊下を歩きながら、俺等は新しい教室へと向っていた。当然、新しいクラスメイ

ト達はお互いに勝手に盛り上がっていた。しかし、そんな中、俺と誠は今度の地区予選

のフォーメーションの話をしていた。「田中をFWにしないと攻撃力が・・。南原はや

っぱりDFだろ。」意見がぶつかり合う中、教室に到着した。3組は、机が綺麗に整頓

されており、まだ、微かに床やドアや机を磨いた時に使ったとされる洗剤の匂いが漂っ

ていた。まだ担任は発表されてはおらず、今から花野木中学のくだらない伝統が始まろ

うとしていた。このくだらない伝統とは、クラス発表と同時に担任を発表せず、生徒が

自分の新しいクラスに入り、静かに新しい担任の到着を待つというものであった。毎

年、他のクラスから「キャー!だとか、ウァー!だとか、やったー!」っといった阿鼻

叫喚の世界が繰り広げられるのである。そして、担任は自分のクラスに突然入り、自己

紹介と一年間の抱負を語らなくてはならない。