「栄蔵さん?」

「いや、何でもないんだ。
 それよりかんざしどうすんだい?」

「えぇ、これなんかどうかしら?」

「桜色…か。
 お前さんはほら、もっと華やかな
 こんな色なんてどうだい?」

「わぁ。すてきね!かわいい!」


話半分で買い物を進めていく。

しばらくすると、ばたばたと
騒々しく人が入ってきた。


「おじさん!このかんざしくれ!」

「はいよ。そこの彼女にあげるのかい?
 きっと似合うよ!」


店に入ってきたのは金髪に青い瞳の
美しい青年…と、紅葉。


買っていたのはあの桜色のかんざし。


かんざしを買って二人は店を後にした。


「紅葉…。」


俺の声は


届かない…