春。私にとって、新しい季節の始まり。
特に今年は感じた。





バタバタと階段を降りる足音が聞こえる。
四月の始めの土曜日。天気は晴れ。

「おはよう、お母さん!」

リビングへ入ってきた少女は、
母親に笑顔で挨拶をした。

「おはよう。ナツミ」
「お腹空いたー。早く食べよ」
「さっさと食べないと、遅刻するわよ。」
「嘘!そんな時間!?」

ばっと、胸ポケットから携帯を出し、時間を確認する。時刻は7時5分。

「お母さん……」
「ぐちぐち言う前に食べる。」
「はーい……」

椅子に座り、ナツミは目の前に置かれた朝食を口にする。
今朝のメニューは、トーストに目玉焼き。
コーンスープにリンゴと、朝にはぴったりのメニューだ

「まさかナツミが通信の学校に行くとは」
「うるふぁい」
「口に物を入れて話すな!」
「う………」

もぐもぐと口を動かし、口の中を空にする

「五月蝿いな…私が行きたい場所なの」
「何?逃げ道がゴール?」
「!!?」
「ナツミ。あんた、いつまでも引きずってはいけないのよ。」
「……わかってる。」
「ならいいけど。ほら、食べな」
「はーい。」

再び食べ始めるナツミ。
母は、少し切ない表情で彼女を見つめていた。